電車で | 俺様について

 

飲み会の帰り、川崎から家に帰ろうと電車に乗っていた。
余り混んでいなかったが座れるほどでもないので、扉のすぐよこの角に扉方向を向いて立っていた。
程良い酔い加減でボケェ~っとしながら立っていると、屁をしたいと言う欲求が高まってきた。
酔いのためか後先考えず、

 『音は出なそうだからいいや』

と放屁した。 音はしなかった。
ふっと我に返り考えると、尻のあたりに人の気配がする。
ドキドキしながらポーカーフェイスで振り向いていると、案の定、女の人が俺様のケツ下付近にいる。 座席の一番はじの所に座っている人だ。この位置だともろにガスを浴びる位置だ。
だが運が良いことに眠っているようだ。 だが、心なしか眉が曇り表情が険しい。もしかして寝たふりをしているのかもしれない。
しばらく観察していると

 「うぅっ」

とうめき声を漏らした。やはり俺様のガスの影響か?
その電車は稲城長沼行きだったため、俺様は乗り換えの為降りたが、その人は目を覚まさず、険しい表情のまま折り返して川崎に向かって発車してしまった。
あるいは眠っている途中から気絶に切り替わっていたのかもしれぬ。

 『いい夢を見ろよ』

と祈らずにはいられなかった。