T | 俺様について

 

入社したての頃、見つけられないバグを先輩のKさんに見つけて貰ったとき、特殊な知識で解決していたので、何でそんなことを知っているのかと聞いたところ、

 「何かにつけて、雑誌とかのに目を通して、すぐ必要な知識ではなくても、重要なところはスクラップしておくんだ。 そして、後で必要になった時、それを引っぱり出して調べる等している内に覚えていくもんだ。」

と言われた。

 『おお、そういう物かもしれない』

と軽い衝撃を受け、それ以来コツコツとスクラップを続け、何かあるとそれを調べる様にしている。おかげでかなりの量になり、あまり整理していないので、見た目はグチャグチャだが、内容を比較的覚えているので引き出すのにはあまりくろうしない。

ある日、後輩のTが質問して来たので、スクラップした膨大な資料の中から、そのことに関連する記事を取り出して答えてやると、なんか『おおっ!』っといった表情をしている。

 『感心してやがるな。 ここはKさんに言われたセリフで決めてみるか』

と思い、口を開こうとしたその瞬間、

 「『物を捨てられない症候群』なんですね。」

と言われた。
さっきの表情は、資料の多さと、その煩雑さに呆れたものがにじみ出たものだったらしい。

『決めぜりふ』を奪われ、訳の分からない症候群にまでされてしまった上、呆れられてしまったのが眼から血が出る程悔しかった。