2005年8月29日(月)

 

会社で昼飯喰いに外に出ようとエレベータに乗る。

1つ下の9Fで、その階の会社の社員が乗り込んできた。 その中に見覚えのある顔発見。 む、彼は昔バイトで一緒に働いたI君ではないか。 バイト仲間の中でも結構親しかった人である。 こんな近くで働いていたとは奇遇である。

しかし、今、確かに目が合ったのだが、特にノーリアクションで目線が外れた。 特に、

 「中途半端な知り合いで、面倒だから忘れたふり」

とかそう言うのでもなく、全くもって知らない人とタマタマ目が合ったって感じで、全く自然な感じであった。 完全に忘れているようだな。

うむ、そのバイトは今から十数年ぐらい前である。 俺のように、ファミコン3台分に匹敵すると言われる程のスーパー頭脳の持ち主ならともかく、一般人は忘れてしまっているのも仕方ない話だ。

I君は他の同僚などと一緒にいるので、それに割り込んで俺を思い出させて、それから話をするのも中々厄介である。 きっと俺を思い出した頃には、エレベータは1Fに到着してしまい、他の同僚と一緒にいる手前、俺と話す事も出来ずに、アワアワ、オロオロする事になるだろう。 つか、いつまで経っても思い出してくれなかった時には、立場が無くに非常に困ってしまう。
そんなに無理する事もないので、こちらもそのまま流しておく。

そうして、エレベータの扉はしまり、降下を始める。
一応、俺は視界の外れのギリギリの辺りでI君を捉えておく。 せめて早めに俺のことに気づき、思い出しさえすれば、軽く連絡先を教えるぐらいはエレベータが降りきる前に出来るのと言う判断の上の構えである。

エレベータはドンドン下降を続け、現在3Fである。 もう今更向こうが思い出しても、時間はないぜ。 タイムオーバーだ。

…と思った瞬間、I君はハッとして、俺の方を明らかに見ている。 どうやら思い出したようだ。
しかし、先ほどの俺の葛藤と同じ状態に陥っているらしく、声を出して話しかけて来ることはなく、「こっち向かないかな」と言う感じで、微妙なアピール行動を見せている。
んだが、俺の心の中では既にタイムオーバーであり、アワアワ、オロオロ状態になると思っているので、気付かないふりを続ける。 むこうも、現在の階が2Fだと気づき、今更話す時間無しと考たらしくアピールを止め、むしろ俺に気付かれないように身を縮めている。 俺と同じ領域に到達したようであるな。

こうして、そのままエレベータは1Fに到着し、そのままどちらからも声をかけずにお別れである。 お互いの気遣いの上での気付かぬふり。
これで、どちらか一方が空気の読めない人だったら、後先考えずに話しかけた所ではあるが、その場合、きっと話す事もなく、エレベータ内で苦痛な時間を過ごす事になるんだろうな。 どっちが正しい選択だったのかは、神の味噌汁。

まぁ、I君とは、そのうちまた会うことも有るのかもしれんが、もしかしたらこれが今生の別れやもしれぬな。