2001年5月2日(水) エレガントインド旅行(20):最後の試練

 

アーユルヴェーダ

日本ではエステの一種として知られるアーユルヴェーダは、本来は、古来インドの伝承医学。 リラクゼーション目的の施術なら旅行者でも気軽に体験できる。

アーユルヴェーダは人間の自然治癒力を重視したインドの古典医学であり、現在も人々の日常生活に深く関わりを持っている。 その起源は古く、はるか3000年以上もの昔にさかのぼるという。

サンスクリット語のアーユ(生命)、ヴェーダ(知識)と言う言葉からなるアーユルヴェーダ。 理論の根本は、人間の身体に元来備わる、病気を治し健康を高める力を最大限に引き出す事で、本格的な治療には2週間以上の期間を有する。 気軽に体験できるのは1~2時間程度のボディ・マッサージだが、リラックス効果は十分期待できる。 また、温めたオイルを一定の高さから額に落としていくシローダーラという施術は頭痛やストレスへの効果が高い。

アーユルヴェーダの店に向かう途中、値段を聞いてみると、なんと一人日本円で9,000円とエライ高い。
うーむ、ガイドブックを見ると、『Rs.300(約900円)~700(約2100円)』と書いてあって、もっと全然安いのだが。 たぶんこれも外人向けの店なのだろうなぁ。 現地の人がこんな値段を払っているとは考えられないし。
Tは行く気満々だが、俺は値段が高すぎるので断りたい気分であった。 しかし、今更という事と、弱っているので帰国前にマッサージでリラックスするのも悪くないかと思い行く事にする。

入り口で、『こんな感じですよ』と紹介するためだろう、マッサージの様子の写真がおいてある。
みると、裸のインド人が、武士の情け程度の超ミニのパンツというかふんどしというか、良くわからないものをはいて、尻をカメラの方にけてうつ伏せに横たわり、油まみれでマッサージされているのだ。
俺はてっきり頭だけのマッサージだと思っていたので、全身マッサージとは意外であった。

しかしその事よりもその写真を見ていると、

 『なんか何処かで見たような光景だなぁ~、どこだっけなぁ?』

と、デジャブを感じるのだ。 するとダーラムさんが、

 「これ、Tさんダヨー キノウノー ブワッハッハ ゲホォッホォッ ブフォーッフォッフォ!!」

ムセながら大爆笑しだすダーラムさん
それだ! 昨日の尻注射を打たれているときのTの格好にそっくりだったのだ! まったくもってそのとおりで、俺も大爆笑。
Tは自分の事なので、「そんなにか?」なんて言って、気恥ずかしげな表情であった。

奥の個室に通されるとと、二つのベットと二人のインド男マッサージ師が俺たちを迎え、スッポンポンになるように指示される。
しかし、すっぽんぽんか。 きっと女性には女マッサージ師が担当するのだろうな。 しかしあの写真のフンドシパンツは撮影用だったのだろうか? それともモデルの趣味か?

India_massage

素っ裸でそれぞれベッドに横たわると、例の頭にオイルを垂らすマッサージを俺が、全身のマッサージをTがやる事になる。
仰向けに寝ると、目の上に蒸しタオルを置かれ、完全に視界を奪われる。 しばらくすると、おでこあたりに柔らかい感触のものがあたり、どうやら油が垂れてきているのだと感じる。 これは一直線に垂らすだけでなく、左右に揺らしながらタラしたりする。 そして垂らしながら頭のマッサージをするのである。
しかし、何も見えないので、おでこの上を『湿った柔らかい物が左右に動いている』感覚にある疑いが生じて、Tに、

 「おーい、何も見えないんだが、俺のおでこをインド人がベロベロ舐めているんじゃないだろうな?」

と聞いてみると、

 「うーむ、そんな事はないぞ。 それより俺は腹を押されて、何か出そうだ。」

と答える。 そう言えば、全身マッサージで下痢絶好調の腹を押されたら、かなり大変な事態だではないか! 全然考えて無かった。 ガビーン。

俺は頭の、Tは身体のマッサージが終わったところで、ベットを交換である。
俺は頭がギトギト、Tは全身ギトギトで油ギッシュ。 身体のマッサージはすっぽんぽんで受けるので、最初から気になっていた事を聞いてみる。

 「ちんちん部はどうなるのだ?」
 「ちんちん部は50回ぐらい触られるのだ!」

『こんな体調の時に、デリケートな部分を50回も!』と考えると気が遠くなった。 なんなんだここは、苦痛を与える施設なのだろうか? 腹も押されるようだしこれから大変な事態が待ち受けている事は、神の身ならぬ俺様にも容易に想像がついた。

まずは腕のマッサージから始まる。 やり方は左手の時は、マッサージ師の右手で指を一本一本絡めて、恋人のような手つなぎをされて、左手を用いて腕をさすられるのである。 これも何かイヤで苦痛であるが我慢できる範囲である。
次にボディのマッサージが始まると、予想通り大変な事である。 オイルのヌメリを利用して、腹を下に向かって一気に、それも何度も押された時には、マジに出るかと思った。 俺が歯磨きのチューブだったら、余さず出していた事だろう。 俺は、

 『ぐぉ、順目に押すな! せめて下から上に押してくれぇ!』

と心で叫ぶ。 んもう、リラックスどころではないのだ
この永遠とも思える長い時間の拷問にも、超腹筋パワーと尻穴パワー、根性で持ちこたえる。 あの根性は年に1度ぐらいしか出せないと思う。

腹をクリアした後は足へと移行する。 しかし今度は、『ちんちん部は50回… ちんちん部は50回…』と頭の中をTの言葉がグルグルと周り、これまたリラックスできぬ。
・・・しかし、終わってみるとちんちん部は別に触られなかった。 きっとTはマッサージ師に気に入られてサービスでもされたのだろう。

終わると、全身のオイルを軽くタオルで拭かれる。 その間、

 「グッドフィール?」

と何度か聞かれたが、『正直辛かった』と言いたかったが、大人なので、「うむ、グッドフィール」と話を合わせておく。 Tもそっちのマッサージ師と同じ様な会話をしていたが、俺とTはお互い日本語で、

 「きつかったな」
 「全然気持ちよくなかったぞ」
 「むしろ苦痛だ」

と言っていた。 何はともあれ、とりあえず終わった事にホッとした。 あるいみ達成感はある。
とりあえず、下痢時はマッサージ禁止と言う事をこの歳になって学習した。

マッサージを受ける前よりボロボロになりながら店を出る。 それにしても全身の油が臭くてたまらん。 良い事一つも無し。
ダーラムさんは、

 「アーユルヴェーダすっごい気持ちイーデスヨネェ。 私も月に2度ぐらい行くんですヨォ」

とか言っている。 まあ、体調が良ければ気持ちいいのだろうな。 でも、『あんなに高いのに?月二度も行くか?』と思い、質問してみる。

 「あの店に行くんですか?」
 「ウ、ウン。 まあ、あそこだったり・・・」

と明言は避けていた。 たぶん行くにしても、別の店だろうなあ。
今だにインド人の月収がどのくらいか不明ではあるが、日本円で一人9,000円って相当高いと思う。 聞くと、特にあの店も外人向けでは無いと言っていたのだが。
ダーラムさんは日本人ガイドの職業で高給取り(これは本人から聞いた)の方なのでまあ良いが、普通のインド人はこんな所これるのだろうか? 俺はこの値段だったら日本に有っても月に1度も行かないと思うが。 やはりあの店は外人向けで、ツアー会社と契約が有ったりするのだろう。

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マッサージの店の裏はお土産屋であり、例によってそこに連れて行かされる。
店に入るなり俺とTに店員が一人ずつ付きっきりでついてきて、全然落ち着いて物色できないのである。 しかも物はどれも値段が高くてげんなり。 やはり外人向けとしか言いようがない。

ダーラムさんはこの店で売っている物は全部本物と言っていた。 旅行中よく木彫りの置物を持ち寄る物売りがいて、その都度ダーラムさんが、『それは偽物なので買ってはいけない』と言う事を言われ、何が偽物なのか全然わからなかったのだが、どうやら木の材質の話らしい。 本当の置物では香木が用いられ、何時までたってもにおいを発し続けるとの事である。

とりあえず幸せの神様らしいのでガネーシャの像を一つと、大理石で出来た小型の像の置物を3つほど購入。 試しに値切ってみたのだが、全然値段が下がらなかった。
他にもいろいろ見て見たかったのだが、店員が勝手についてきて、ちょっと見るだけで、「それは○○ルピーだ」といちいち値段を言うのである。 それを、ふーんて感じで眺めていたりすると、店員がイライラしてきて「買わないのか? あっちのあれは○○ルピーだ」と聞いてもいな物の値段までしゃべり出す。 もう全然落ち着かず楽しめない。 ついてくるなと言いたい。

今回の旅行を通して行った土産屋はすべて、なんかなぁ・・・な感じであった。
インドのガイドブック等には、買い物の値段交渉とかも楽しみのような事がよく書いてあり、俺もそれを楽しみにして来たのだが全然当てはまらなかった。 ツアー会社として、妙なところには連れて行けないとか、おみやげ屋との契約(客の買い物の何割かがガイドなり旅行会社なりに入る)とかも有るのだろうけどねぇ。
とりあえず、非常にこの点が残念でならなかったな。