2001年4月29日(日) エレガントインド旅行(05):インドのカレー

 

大通りに向かって皆で歩く。 月明かりだけが頼りなので、野良犬か飼い犬か不明の犬も沢山いるのだが、眼が不気味に光っている。 人によっては怖くて歩けないかもしれないな。

ぐねぐね歩いている内に大通りに出る。 インドは大通りでは夜でも人が多く、とてもにぎやかである。
インド人には外人は珍しいらしく、どんなにゴミゴミしたところでも目立ってしまうらしく注目を浴びてしまう。 こんな所一人で歩いたら、絶望的気分を味わいそうだが、魔神ダーラムという力強い仲間がいるので安心である。
インド人の熱視線にビビリながらも、『余裕ザマス。 旅慣れてるザマス』と言うスタイルを崩さず、インド人に話しかけられても適当にあしらいながらインドの雰囲気を味わう。

ちょっとうろついた後、インドの居酒屋みたいな所に入る。 看板も出ていない、つうか出ていても分からないのだが、こんな所は俺たち二人だったら絶対入れない感じだ。 完全に現地人の飲み屋である。 ここでもウイスキーとつまみを喰う。 ここでもダーラムさんは水はミネラルウォーターを手配してくれた。 ありがてぇこった。
ここで知ったのだが、アシュールさんはベジタリアンだそうな。 ベジタリアンは野菜食でも、肉食の俺たちと同じ皿からも物を食べてはならないらしい。 おそらく宗教から来ているのだろうが結構厳格なものなんだな。 なんでもバクバク食べるダーラムさんとは対照的である
俺は二日酔いになると明日が台無しなので、有る程度セーブして飲んでいるのだが、ダーラムさんは酒好きらしく、楽しそうに飲んでいる。 インド人は基本的に酒が強いらしく、ダーラムさんも二日酔いになった事はないらしい。
 「家に帰ると、わたしの奥さんの料理がマテルヨォー うちの奥さんの料理ウマイヨォー」

とダーラムさんがしきりに言っているので、ここでは食べるのをセーブしていたのだが、何故かアシュールさんに食い物を勧めまくられ完全に腹一杯になって店を出る。

ダーラムさんは友人二人を送るためか、俺様たちにはマンシンさんと一緒に先に家に戻っていてと告げて去っていく。
ダーラムさんがいないとなるとしょうがないので、俺たちは片言英語でマンシンさんに話しながらついていく。 どちらかというとTが熱心に英語によるコンタクトにチャレンジしており、

 「オゥイェー。 オー。 オゥオゥ」

とよく聞くと、アシカのようにオウオウとしか言っていない気がするのだが、なんか二人は気があった様に楽しげであった。 マンシンさんも英語がぺらぺらというわけではないので、きっとお互いの最大限の譲歩および気遣いで会話が成り立っているのだろう。

しばらく歩くと来る時に通らなかった道を通ったり、同じ所を何度も行ったり来たりし出す。 どうやらマンシンさん道に迷ったらしい。 やめてくれ。


「はっはっは、大丈夫」

みたいな事を言っているが、なんかマンシンさんの眼は笑ってないので、全然大丈夫そうではない。 『大丈夫』と言っている根拠は絶対無いのがありありと伺える。 あっちを見たりこっちを見たりしていたが、どうしても道が思い出せないらしい。 しょうがないので、車で来た時の大通りまで一度出て、車で通った道を歩きながら大回りして帰ることに。
道すがら、焦りからかこのときのマンシンさんは良く喋っていた。 でも相変わらず眼は笑っていないのが不安である。 しかし、俺様はこの大通りを車で来る時に覚えていたのであまり心配なかった。 先頭切って歩き、何とかダーラム家にたどり着いた。 危ないところだったぜ。

迷子中に余裕ぶって記念撮影のTとマンシンさん。 迷子中なので周りは漆黒の闇

迷子中に余裕ぶって記念撮影のTとマンシンさん。 迷子中なので周りは漆黒の闇

俺たちはあれだけ迷子になったが、まだダーラムさんは帰って来ていなかった。
そこで、ダーラムさんのお兄さんと話をする。 話通じる人がいないままこの場を過ごすのはかなりきつい物があるので、兄さんがいてくれて助かった。
この兄さんはダーラムさんとは全然似ておらず、風貌は日本人ぽい。 そのため日本人には、『ナカムラさん』と呼ばれているらしい。 何でナカムラという名字が選ばれたのか分からぬのだが、確かに言われてみればナカムラさんって感じである。 仕事は前記の様にガイドで、昔TVか何かの企画で緒方拳が南インドを旅行した時にガイドをした事が有るらしい。

ナカムラ兄さんには子供が2人ほどいて、一緒に話を聞いている。 そこで何故かTが手品を始める。 兄さんにはトリックがバレバレだったが、子供たちはビックリしていた模様。

そんなこんなしていると、ダーラムさんが帰ってきたので、奥さん自慢の手料理を食べる。マトンを使ったカレーである。 手で食べるのかと思ったがスプーン用意してあった。 俺たちに気を使って用意してくれたのかもしれない。

ここでインドのカレーに初コンタクトである。 インドのカレーは日本のカレーとはちょっと違う。 鉄の平皿に米(縦長のタイマイっぽい米)が乗っていて、それと一緒に鉄の容器が乗っていて、そこにカレーが入っている。
以後、何度かカレーを見たが、米の代わりにナン(パンみたいなもの)だったりするが、だいたいインドのカレーはこんな感じである。 そういえば、キン肉マンに出てきたインド超人カレクックの頭には、こんなのではなく日本のカレーが乗っていた気がする。

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『カレクックは実は日本の超人に違いない』

と思いながら食べる。
俺様は既に腹一杯だったが、やはりおいしい。 日本人向けに辛さは控えめにしてくれているらしく、Tにも食べれる辛さだった。

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食べ終わると結構夜遅くなっており、明日に備えてそろそろホテルへ向かう事に。
途中ダーラムさんは家に招待されてどうだったか? と尋ねてくるので、本当に楽しかった旨を告げると、
 「私がガイドする時は、必ず家に招待することにしてるんですヨォ。 こういう体験はなかなか出来ないでしょぉ」

と、ダーラムさんもとても嬉しそうだ。
俺も本当に得難い経験が出来て満足である。 こういう事してくれるなら、『他の人もダーラムさんをガイドに指名して旅行に来ればよいなぁ』と知らないインド旅行者の事まで気遣ってしまうぐらいであった。 いや、本日は予想外な収穫であった。

Tのノーテンキインド旅行記 2

 結果として、結局ダーラムさんはとっても良い人で、水割り作ってくれたり、奥さんが料理作ってくれたり、酒が無くなったら近所の一杯飲み屋みたいなところに案内されたりして、最後には、ダーラムさんの甥にトランプマジック披露したりするぐらいご機嫌になった。とっても面白かった。
どうやら俺の人生は終わらなかった様である。