2005年8月15日(月) その5 ミャンマーで絡まれる | タイ旅行(15)

 

国境付近まで戻って来ると、何やらニコニコしながら俺を見ている男が一人いた。

「日本人か?」と話しかけてくるので、そうだと答えると、「何処に行ってたんだ?」と聞いてくるので、「そこらへんを散歩してた」と答える。

「バザールは行ったのか?」と、さっきの場所を指さすので、「行った」と答えると、「あっちのバザールは?」と違う場所を指さした。
話を聞くと、さっき俺が行ったバザールは、よそ者向けのバザールで「チャイニーズバザール」とか呼ばれていて、現地の人は直ぐそこだが別の所にあるバザールに行っているとか。

「あっちのバザールにも行けば?」と言われたが、「あと45分しか時間がないし止めておく」と言うと、「あの5:00と言うのはミャンマー時間の5:00だからまだ時間有るよ」と言われた。
ビザを見ると、「Report back befor 5:00 pm (MST)」と書いてある。 MSTと言うのはミャンマー時間の事なのだろうか?
ミャンマーはタイより30分ほど遅いらしく、あと1時間以上有る事になるな…。

ミャンマーのお寺入り口

ミャンマーのお寺入り口

仏像は、電飾でピカピカ

仏像は、電飾でピカピカ

大雨に逃げまどう少年坊さん達

大雨に逃げまどう少年坊さん達

時間に関してはOKでも、正直疲れていたので気乗りはしないかった。 あと、時間に関しても本当にミャンマー時間の5:00なのかチョット不安である。
しかし彼はヤケに、あっちのバザールを勧めるので、まぁチョット覗いて帰ればいいかと思い、行ってみる事にする。

「じゃあ行ってみるよ」と、示された方向に向かって歩き出すと、何故か彼もついてくる。 「どうしたのか? ガイドなら要らないよ」と聞くと、「いや、解っている。 暇だから俺も行く。」と言っている。
『押しかけガイドか?』と疑ってはいるが、ガイドは要らないと宣言した事だし、一緒に現地のバザールに向かう。

彼の名前はニューイと言って、パキスタンの父親と、ミャンマー人の母親のハーフらしい。 その二つの国の組み合わせが何やら不思議なのだが、俺の勉強不足なだけで何か関連があるのかな?

チョット歩くと直ぐにその現地のバザールが有った。 入り口辺りでニューイは便所に行ってくるとどこかに行ったので、一人でバザールに突入。
しかし、時間的な問題か、物資不足なのか、店は沢山並んでいるのだが棚は殆ど空の店ばかり。 道もドロドロで、細い道の中央に山ほどゴミが積まれていたりする。 活気も全くない。
当然お土産屋なんか有るわけ無く、さすがにココでは俺の様な外人は怪訝な目で見られてしまう。 あまりに場違いである。
なんでこのような場所をニューイが勧めたのか謎だが、早々に引き上げる。 出口ではニューイが待っており、「どうだった?」と聞くので、「いや特に欲しい物は無かった。もう帰る。」答える。
すると、今度は「もう少し先にお寺があるのでそこは見ないか?」と誘ってくる。 たしかに、そこから寺の屋根が見えるが、もう気乗りがしない。 しかし、直ぐそこだからと何度も言うので、またチラッと覗いて行くことにする。

ミャンマーも敬虔な仏教国であるので、お寺が至る所に有るようだ。
お寺自体はタイほど派手ではない。 しかし中の仏像が電飾でピカピカに飾られている。 ベトナム等はこうやって電飾で彩ると聞いていたが、ミャンマーもそうなのか。 クリスマスツリーのようであり、お寺というとどちらかというと、落ち着いてシックな感じと思っている俺の感性では、なにやら不思議な感じであるなぁ。

お堂でお祈りをしていたところ、先ほどまで降ったり止んだりしていた雨が再び強烈に降り出した。 んもう、バケツをひっくり返した様な大雨であり、坊さん達も大慌てで逃げまどっている。
今回はチョットやそっとでは止む気配が無く、お堂で雨を眺めながらニューイと話して雨宿り。

ニューイはなんか内蔵の病気にかかっているらしく、お腹をしきりに痛がっている。 さっきバザールでトイレに行ったのもそのせいらしい。 いま気付いたが、立ち上がった所を見ると、金玉の所にハンドボールぐらいの大きさの物が入っている様にズボンが膨らんでいて大変そうだ。 家族構成は姉弟が数人いて、母親も借金していて家計が大変らしい。
その他、普段の仕事はタイでビル掃除していて大変だとか、給料が安いとかなんか苦労話を色々している。 そうかと思うと、俺の給料を聞いたり、カメラは幾らだとか、なんかお金の話が多くなってきた気がする
正直まだ俺は、彼が最終的にお金をせびってくるんじゃ無いかと疑っている事もあり、曖昧に金額は誤魔化しながら答える。

まぁ、日本のサラリーマンの給料をこちらに換算したら相当な高額だろう。 しかし、居住費や物価もそれに伴って高いわけで、俺はそんなに裕福という訳ではないよな。 ただ、このように休みに遊びで海外旅行するという事自体、相当な道楽なんだろう。 でも金額だけ言うと俺も住宅ローンがあるので、何千万単位の借金をしているので、借金対決なら勝つ自信があるぜ

で、ニューイと比べて俺の方が裕福だというのは間違いないとは思うが、かといってこんな感じで知り合った人に個人的に援助してたら切りがなよな。

う~む、本当のところ彼は善意で案内してくれているかもしれないのだが、心貧しい俺はこういう事を疑い続けて気が休まらない。 だから、こういう形で一緒に行動したくなかったのだがなぁ。 こうやって疑いながら過ごすぐらいなら、いっそ一人きりで困っている方が楽だ。

結構な時間雨宿りしていたが、今回は一向に止む気配無い。
すると、ニューイが坊さんに1本傘を借りて来てくれたので、それで国境に向かう。 しかし、雨は止むどころか激しさをまし、誇張ではなく目の前が真っ白になって前が見えないほど強烈になってしまい、道も水没して歩くのも必死である。

なんとか、国境にたどり着くと、まだチョット時間がある。
国境のすぐ横に茶店があるので、そこでお茶をしようとの提案を受ける。 お茶ぐらいはごちそうするつもりだ。

なんかココでもニューイの苦労話が続くので、話を聞きながらゲンナリ。
途中、「ミャンマーのお金を見たこと有るか?」と言われ、「無い」と答えると、チョット席を外して戻って来ると、ミャンマーのお金KYAT(チャット)の100KYAT札と、200KYAT札を持って来て、それをくれるという。 KYATの相場が解らないので、これが幾らに相当するのか解らないが、あんだけお金に困っていると言う話を聞いた後である。 「いや、とんでもない。」と断ったが、どうしても持っていけと向こうも引かない。 「じゃあ、その金額に該当するバーツを払う」と要らないと断られたが、「その代わり日本のお金を見せてくれ」と言われる。

円はホテルに置いて来ており、本当に持ってなかったので「無いと」答えると「嘘だ」と言ってくる。 本当にないんだと言うと、「じゃあ、バーツを見せてくれ」と言ってきた。
「君はタイで働いてるから、バーツは見たこと有るだろう?」と答えると、「でも俺は見たいんだ」と言ってくる。 『そろそろ来たか…』と言う感じである。
諦め半分に50Bを出して見せると、「俺はもっと高額が見たいんだ」と言い出した。 「持ってないよ」と言うと、「嘘だ。俺はさっきお前が持っているのを見たぞ」と言ってきた。 これは絶対に嘘である。 俺はお金を見せびらかす様な事をしたくないので、旅行中はポケットで直ぐに出せる所にはそんなにお金を入れてないのだ。 大体、ミャンマーに来てからここに来るまでお金を全く使ってないのである。

「なんでお金を見たいんだ?」「見たいんだ!」
「見て、それをどうするつもりか?」「…俺はビル掃除で大変なんだ。病気でもある。」
「それは何度も聞いて解ってる」「母親も借金して大変だ」
「で?」「俺達はフレンドだ。」
「それだからお金を払えと?」「俺は大変なんだ。何で解らないんだ!」
「最初からお金が目的か?」「…」
「俺はガイドは要らないと言ったよね?」「俺達はフレンドだ。そして俺は大変なんだ。」

と言った、不毛なったやりとりを続けている間、俺の脳裏には有名な探検隊の事を思い出していた。

 

勝手な
  ( `Д´)( `Д´) 
 (( (\ノ) (\ノ) 
   ノ ̄ノ ノ ̄ノ 

   ガイドで
  (`Д´ )(`Д´ ) 
   (ヘ ノ)  (ヘ ノ) )) 
   ( ̄(   ( ̄( 

    たかられる
  ( `Д´)( `Д´) 
 (( (\ノ) (\ノ) 
   ノ ̄ノ ノ ̄ノ 

   ハイ! ハイ! ハイ 
  (. `Д)_(Д´ ) 
  ノ ノヽ |  |> 
  ノ >  < ヽ 

     ハイ! 
  (.   )_(`Д´)ノ 
  ノ ノヽ |ヘ | 
  ノ >    < 

     ハイ! 
  (`Д´)_(`Д´)ノ 
  ノ ノヽ |ヘ | 
  ノノ     < 

     ワォ!
 あるある探検隊! 
ヽ(`Д´) ヽ(`Д´) 
  | ヘ|ヽ  | ヘ|ヽ 
  | ̄     | ̄ 

 あるある探検隊! 
  (`Д´)ノ  (`Д´)ノ 
  ノ|∧ |   ノ|∧ | 
    ̄|     ̄|

「これはホンマあるあるやなぁ、松本君」
「ホンマそうやなぁ。会って早々からフレンドとか言い出したら怪しいわなぁ。」

と俺が脳内の松本君と会話している間も、ニューイはひたすら、「俺は大変」「母親の借金」「フレンド」を織り交ぜながら繰り返している。

そう言う窮状を訴えるなら、最初から「案内するからガイド料が欲しい」と言ってほしい。
もちろん俺は最初からガイドなんか欲しくないが、「こう言う窮状の為に、是非ガイドを引き受けたい。」と言う話で今ぐらいの勢いで頼まれれば頼んだような気がする。 そうなれば俺だって一緒にいる間中、疑ったり何だりせずに済むし、ガイドとして色々と注文をつけたりでお互いそれなりに有意義で有ったろうに。
それに、今だって最後まで金をせびって来たりせずに、最後まで気持ちよく案内をしてくれれば、それなりのお礼は(お礼をするような事されてはないが)しようかと思ってたんだが。

色々言いたいことはあるが、俺の英語が能力が低く、殆ど言えないのが残念である。
とりあえずお前は、マウンタンを見習え。

 

傘を借りてきてくれた事は感謝しているので(つか、こいつがいなければ傘も必要なかったのだが)チップ代わりに先ほど出した50Bはやると渡すと、

「え? これっぽっちか? ガイド料にしては安すぎるだろ。」

等と半笑で、バカにした様に言ってきた。 なんて小憎らしい顔してやがるんだ。 ギィーッ!!!!
…いい加減こちらもむかついてきた。 大体あれでガイドのつもりとは片腹痛い。 嫌な思いさせやがって。

んだが、これ以上、会話するとこちらも爆発してしまいそうだ。 お茶代を払って店を出る。 店の横はすぐ国境の門だ。

もう、奴になんぞ用はないのだが、なんか後ろをついてきながら、「なんだよ」「これはいくら何でも安い」「ガイドだぞ」とブツブツ俺に聞こえる様に言ってやがる。

いい加減、その50Bも取り返してやろうと振り向こうかと思った矢先、

 「Shit!!」

と言う声が聞こえた。 わざわざ英語で言っているので、俺に聞かせる気満々である。

頭の中でブチッっと言う音が聞こえた気がする。
このまま振り向いて奴の顔を見たら、一撃喰らわさねばおさまらない事が自分で良く解る。 んだが、さすがに国境で喧嘩沙汰はマズイ。 キレても冷静にそこら辺まで考えられるのが俺の偉いところだ。

チョット足を止め深呼吸をし、奴の方を見ないようにしてミャンマーを出る。

ミャンマー。 今回は嫌な気持ちしか残らない残念な訪問となってしまったな。
とりあえず、ニューイが本当に親切な人ではなく、単に金目当てだったことが判明し、一緒にいる間中疑っていた事へのやましさは残らなかったのだけが幸いだ。