2002年04月28日(日) エジプト旅行(第一回):旅立ちへの試練

 

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去年、Tとインドに行き、惨敗気分を味わった俺様達であるが、何故か「次はどこへ行く?」と言う方向に話が流れていき、今度はエジプトに決定する
これまた何故エジプトになったのかは良くわからないのだが、なんとなく、

 「インドに行ったから次はエジプトだな」
「そうだな」

と、なんでインドに行ったら次がエジプトなのか全くわから無いまま、相づちをうってしまったのだが、そのまま決定してしまった。

今年のメンバーは去年の、Tに加えても参戦。
Nは去年Tと行ったインドに自分は誘われなかった(こっちはさんざん行く事を告げていたのに聞いていなかったらしい)と拗ねていたので、今回は参加させてやる事にした。

エジプトの公用語はアラビア語である。 しかし、インドと同じく旅行者は英語を使用するので、英語さえ通じれば旅行中困ることは無い様である。
もちろんエジプト人に英語が通じても、俺に英語は通じないのだが、去年のインド旅行で英語のダメっぷりを痛感したTは、帰国後奮起し留学(駅前)して英語を学んで1年になる。 また、Nは大学院卒業後、しばらく就職せずに数年留学(駅前)していたのである。 これだけ留学経験者(駅前)がいれば、今回の旅行は英語で困ることはあるまい。
文官2名もいれば、1人がエジプト人に襲われてダウンしてももう1人残っている訳で、残機の多いゲームをやっているようで心強い。 俺様は武官としてエジプト人と喧嘩になったら活躍しよう。

しかしTは、

 「いまいち俺の英語は使える気がしない」

、Nは

 「駅前留学で喋れるようになる奴はいない」

等と言い、二人して

 「自分の英語はあてにするな。最終手段だと思ってくれ」

等と言っているのだが、すると全員最終手段になってしまうのだが。 まぁ、謙遜だと受け止めておこう。

とりあえず今年は早めに計画が発動したので、まだ時間がある。
しばらく各々でエジプトに関する資料を集めした後、我が家に集合してツアーならどのツアー、個人旅行にするなら何処に行くか等を検討する事にする。

それにしてもエジプトのガイドブックは少ない。 インドより少ない。
TとNは「地球の歩き方」を買っていた。 ガイドブックと言ったらまずこの名前を思い浮かべるほどメジャーな本である。 しかし、この本は非常にメジャーではあるのだが、旅行者の体験などをあまり検証せずに載せてたりするし、内容が古かったりする事が多いのだよな。 海外旅行好きの人には特に嫌われているようで、この本の事を「地球の騙し方」と呼ぶ人も多い。 なのでとりあえず俺は「JTBのワールドガイド」にしておく事にする。 つか、他はこれしか見あたらなかったのだが。

今年も日程はゴールデンウィーク中になるのだが、それにしてもこの時期、飛行機代が滅茶苦茶に高い。 往復で30万円を超えてしまうのである。 だいたい考えている内容のツアーを見ても、一番安くても35万円、普通40万~45万円もするのだ。 でも、この時期以外日程を合わせるのが無理なので仕方がないよな。

とりあえず計画の背骨になる、ツアーを利用するか、個人旅行にするかで悩む。
値段を計算してみると、「総合するとツアーの方が安上がりで、モロモロ楽」のだが3人とも「好き勝手に行動したい」と言う方の希望の方が高く、場合によっては現地のパックツアーを利用したりするだろうが、基本的には個人旅行で検討する事にした。
Nはやる気満々で、計画をたてている時にTが「個人旅行だとここら辺が苦労しそうだなぁ」とか言うのを聞くと、

 「そう言った現地での苦労もまた楽しいんじゃんか。今から楽しようとするなよ」

とか言って、Tをたしなめている程である。

個人旅行と決まったからには、国際線の往復チケットを入手し、出国日、帰国日を決めなくては、話が進まない。
なにやらNがHISに店長クラスの知り合いがいるそうなので、そこでチケットなどを手配する事にしたが、その店長クラスは偉くなりすぎたらしく、部下に担当を任せた上に、任された方もエジプトには素人で、料金も知り合い料金ではなく定価そのもので色々な意味でガッカリであった。

日程の希望はどうせならゴールデンウィーク目一杯にしたかったのだが、色々な関係上、

行き 4月28日 10:25 成田発 帰り 5月4日 4:00 カイロ発
15:10 アムステルダム着 7:55 アムステルダム着
19:40 アムステルダム発 14:40 アムステルダム発
4月29日 1:15 カイロ着 5月5日 8:45 成田着

と言う、オランダのアムステルダム経由のチケットしか無かったので、これを押さえておくことにした。 エジプトでの正味5日である。 機中時間片道18時間か。 やはりエジプトは遠いな。

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とりあえずこの日程で、いつ、何処の、何を見るかを煮詰めることにする。
ツアー等を参考に調べてみると、カイロアスワンアブ・シンベルルクソールの4カ所が見所らしいので、その4カ所をインドのゴールデントライアングルに対抗して、

 エジプトのゴールデン・ウルトラ・デリシャス・スクエア

と勝手に命名し、それぞれ何処に何日割り振るか検討する。

しかし、この4カ所はこれまた相当な距離があるので、国内線の飛行機でも使わないと移動が難しい。
もちろん夜行列車と言う事も考えるが、時間も少ないことだし、少なくともカイロからアブシンベルまでは飛行機を使いたいところである。
なので出発前に国内線のチケットまでは購入して置くことに決定する。 HISは国際線のチケットを購入すれば国内線も手配してくれるそうである。
その飛行機だが、ガイドブックやエジプトへ行った人の話を聞くと、

 

カイロ(夜中)発

アスワン経由

アブ・シンベル(早朝)着
(半日止まって)
アブ・シンベル発

アスワン(夕方)着

 

と言う、まさに観光の為と言うかむしろ俺達のための便が有るらしいのだ。
しかし、この便の発着時間を見ると、ガイドブックを見てもまちまちだし、HISに聞いてみてもそういった便は良くわからないと言われる。 わからないので手配出来るかどうかもわからないらしい。 そんなもの調べるのが旅行会社の仕事ではないのだろうか?
しかし、色々調べれば調べるほどその便は絶対に存在するらしいのである。
こうなると、エジプトの国内線を手配出来るしっかりした旅行会社を探すしかなく、インターネットやパンフレットを読みあさって探してみる。 しかしツアーならともかく、そういう手配の出来る会社は見つからない。

 「こうなったらしょうがない、現地にて自分たちで航空券の手配を頑張ってみるか?」

と言ってみるが、

 「いいけど、俺の英語はあてにするなよ」

と言うTの及び腰の返事に、『そうは言っても、残り二人の英語もあてにはなぬぞ』と答え、みんなで途方に暮れてしまった。
そのご何回か集合して日程を決めようとするも、結局この件が決まらないので、その他スケジュールも決まらず、時間ばかり過ぎて行った。
そのうちNは、

 「完全にツアーに参加しない? 現地で苦労するのイヤだし」

等と言い出した。 既にやる気を無くしてしまったらしい。 先日言っていた、『そう言った現地での苦労もまた楽しいのだ。今から楽しようとするなよ』と言っていた面影も見えず、既にゲッソリしてやがる。
TはTで、Nの買った『エジプトがすきだから。』と言う、エッセイ風のエジプト旅行ガイドブック(俺達の中での通称、赤い本)の現地人とのやりとりを読んで、

 「読めば読むほどイヤな国だ。行く気無くす。」

とかネガティブになってきてしまっており、旅行自体否定し始める始末。 そして、

 「おそらく完全ツアーの方が安いので、どちらかと言うとそっちが希望だが、二人が個人旅行にしたいというのならしょうがないので従う。」

と、『俺は最初からツアーが希望だった。』みたいな事を遠回しに主張し始めた。 Nも既に心はツアーのようだが俺は、今更イヤだ。
とりあえずNにお菓子を食わせたり、ジュースを飲ませたりして栄養をつけさせ、「おまえは個人旅行っていってたよな!」と念を押して再びこちらに寝返らせ、「多数決に従え」とTに告げ、再び個人旅行で検討する事に再決定する。

そんなこんなで、はかどらない計画会議を何度も行っていたのだが、決まった事と言えば国際線のチケットと、「カイロ・アスワン・アブシンベル・ルクソールを程良くまわる」言う計画と呼べない代物である。
強いて言えばピラミッドの中で最大サイズのクフ王のピラミッドとその玄室(棺のある部屋)も公開されている様なので、それだけは見たいなぁ・・・って感じだろうか。 んが、ガイドブックによると玄室は一日50人限定らしく、ここら辺もパックツアーでも使わないと入れないのでは無いだろうかと言う不安もまた生まれていた。

ところがある日朗報が舞い込んだ
俺様の友人が以前旅行会社に勤めており、当時知り合って今でも親交のあるIさんが、現在エジプトにある『ELEGANT VOYAGE』と言う旅行会社に勤めていると言うのである。
この会社は、もちろんツアーも扱っているが、空港までの送迎、現地ガイドの紹介、その他客の希望する諸々の要望を聞いて手配してくれるのである。
日本人スタッフも居るし、まさに先日から探し続けていた旅行会社そのものではないか
さらに言うと、Iさんは日本人だし、エジプトに勤務して住んでいるし、Yさんを通して個人的にも親身に相談に乗ってもらえ、俺達のための旅行会社と言っても過言ではない
我らはダボハゼの様に食いついつき、さっそくIさんとやりとりして、意見を聞きながら計画を立てる事にした。

話を聞くと例の1日でアブシンベルを観光した後、アスワンに到着する国内線の飛行機はエジプト旅行者の定番らしく、話をするとあっという間に手配して貰えた。
この飛行機のフライト時刻だが、今までは「地球の歩き方」にもそのフライト時間まで書いてあったので、「こういう時間の飛行機があるはずだ」とHISや、他の旅行会社にアプローチしていたのだが、結局その時間の飛行機は存在しなかった。 その為上手く話が伝わらずに難航していたようであった。 日本にいながら既に「地球の騙し方」に騙されている3人である

まあ、気を取り直して、国際線、国内線と決まってしまえば、後はどのように日程を割り振るかでる。
エジプト到着は深夜になるので、その日のホテルの手配と送迎車をよこして貰うことにし、次の日は日本語ガイドを雇って、カイロ近辺を(もちろん、クフ王の玄室に入るスケジュール込みで)観光を依頼等々…、もう今までが嘘のように着々と計画がたっていった。

エジプト旅行スケジュール表

本当にこの旅行会社と出会わなかったら、この旅行はどうなっていたかわからない。

スケジュールが明確になるにつれ、メンバーの士気も上昇。 NもTも、

 「うむ、先日は弱気になっていた。 すまぬ。 個人旅行万歳!」
 「おう、英語は俺にチョットだけ任せろ!」

と言うぐらいであった。

俺も例外なくやる気に満ち満ちている。 早めに会社でもこの日程を触れ回り、暗に『この日程は仮に仕事が入ってもやらぬ』と言う意志を明確にしておいた。
しかし、『会社に旅行届けだけは出せよ』と言われ所定の書類を提出したのだが、時期が悪かった。 例のテロの影響である。 あのせいで会社内でのエジプトの扱いが危険度高に設定されてしまっていたのだ。
何かにつけ、アレを出せこれを出せと言って来くるので、その都度その書類を提出するのだが、いつまでもダラダラやりとりが終らないのである。 それらもはっきり言って、口に出すのも馬鹿らしい内容ばかり。 どうも、色々面倒なことを言って、旅行に行くのを諦めさせようとしている様である。 こちとらいい加減頭にきており、決め毎にある書類は全て提出済なので文句を言われる筋合いはない。

終いには、

 「外国でも使える携帯電話を、自前で用意して持っていけ、さもなくば困る事になるぞ」

と言うような内容の連絡が来る。 後半は脅しだろうか? だいたい俺はそんな物無くても日本国内でも困らないのだが。 持たせたければ会社で用意しろと言いたい。 もうイライラ絶頂なので、「エジプトにも公衆電話ぐらい有る」と逆らってみる。 すると、

「公衆電話もない砂漠の真ん中で置き去りにされたら困るだろ」

等と返事が返ってきた。 『そんなところに電波が届くわけねーだろ!』と言い返そうと思ったが、もう馬鹿らしくなってきてので、今後はハイハイ答えておいて無視する事にした。 もう、ホントに笑い話にしか成らないようなことを沢山言われた。
だいたい「砂漠の真ん中で置き去り」とか、訳のわからないシチュエーションを考えている時点で、エジプトがどんな国か誤解しているよなぁ。

まさか旅行前の障害がこんな所にも有るとは思わなかった。 ちなみにTも同じ会社なのだが、俺様のやり取りを聞いて、旅行届けは出さずに無断で行く事にしたらしい。

 まぁ、こんな感じで、とりあえずエジプト旅行に行くことになったとさ。